4章3話

○ セーフハウス・リビング

3人、戻ってくる。セーフハウスの入り口の戸をあけながら

柊   
「朝からばたばたしたねぇ。でも、ラビちゃんが無事でよかった」

六月  
「本当に。うちに訪ねてきてくれたんですよね。たいへんな目にあわせてしまって、すみません」

ヒロイン、玄関で立ち止まって、頭を下げる

柊   
「わっ、どうしたの、ラビちゃん! そんな頭下げないで!」

六月  
「お礼なんていいんですよ、ラビさん。
俺は、誓いましたから。俺が魔法を教わった暁光(ぎょうこう)騎士団では、誓いは絶対です」

柊   
「俺も、自分がそうしたかったからだよ。記憶がなくて魔法使えないって思ってたけど、使えるもんだね」

六月  
「ええ、時野さんがメタモルフォーゼだとは思いませんでした」

柊   
「ユキヒョウに変身することを、メタモルフォーゼっていうのか」

六月  
「あなたを構成するエーテルが、人間とユキヒョウの二つの形を覚えているってことですね」

柊   
「そっか。なんか、わーって思ったら変身してて、びっくりした」

柊   
「――魔法使いの資質があるなら、これから俺も、ナイトメアと戦える?」

六月  
「戦えますよ。ナイトメアと戦う魔法使いは、『ウィザード』と呼ばれ、登録することで、いろいろサポートを受けることができます。
もし、時野さんがお望みなら」

柊   
「(即答)なるよ。俺、ウィザードになる。なれば、守る力が手に入るから(ヒロインをみてにこっ)」

六月  
「では、登録の手続きは、手配しておきますよ。説明はあとで。
リトスも作らなくちゃいけませんね」

柊   
「リトス? なんだかよくわからないけど、よろしくお願いします、佐奈崎先輩!」

六月  
「(笑って)わかりました」

柊   
「(頭ぽん)ラビちゃん、俺がやりたくてやるんだから、そんなに気にした顔しないで。大丈夫だから」

六月  
「それから、ラビさんのことも、考えなくてはいけませんね。
ラビさんが本当に『預言者』だとしてもちゃんと覚醒していないなら――まだやりようはありますから」

柊   
「困るよね、ラビちゃん。急に『預言者』なんて言われても」

六月  
「『預言者』とは、言葉のとおり、未来を視ることができる特別な魔法使いです」

柊   
「今日のナイトメアの攻撃、言い当てたもんね」

六月  
「そうです。『預言者』の見る未来――ビジョンは、数十秒先からずっと未来まで、さまざまです。
現時点において確定していない事象なので、なんらかの要因が作用することで、視たビジョンが外れることもあります」

柊   
「つまり、『未来を変える』こともできる。佐奈崎くんを、助けたみたいに」

六月  
「『預言の力』は、希少で、特殊な力です。
それゆえに、狙われやすいという特徴がある。ナイトメアにも――他の魔法使いにも」

六月  
「ビジョンは、強力な魔法ですから。
俺の所属する機関では、『世界を救う魔法』って言われてます。
でも、利用したかったり、排除したい組織があるのも、本当です」

柊   
「さっきの、あの黒いやつ! 
最初からずっとラビちゃんのこと、敵だって言ってた」

六月  
「彼の組織では、『預言者とは積極的に排除する存在』なんです。
彼らは、『預言者』は、ナイトメアにのっとられやすく、そうなる前に疑わしきを排除せよ、という思想だと聞きます」

柊   
「そんな乱暴な!」

六月  
「でもラビさんはまだはっきり覚醒していない。
……今なら、まだ間に合うと思うんです。封印することができる」

柊   
「預言者としての力を、ってこと?」

六月  
「ええ、この数日の記憶と一緒に――『覚醒したかもしれない記憶』そのものを封じるんです」

柊   
「この数日ってことは、俺たちに会ったことも忘れちゃう?」

六月  
「――そうなります。その代わり、ナイトメアに襲われる確率もぐっと下がります。
まだラビさんは魔法使いに名乗っていない。
エーテルと名前が本人の声で照合されてないから、他の魔法使いが探すのも困難になる」

柊   
「それで、俺たち相手にも名乗っちゃダメって言ってたのか」

六月  
「ウィザードにもいろいろあります。情報はどこから流れるかわかりませんから」

柊   
「ふうん……(何かに気づく)」

六月  
「時野さん、どうかしました?」

柊   
「いや……その……
(とりつくろい)なんか、ちょっと、外の風にあたってくる。
ちょっといろいろありすぎて、混乱してきちゃった」

バタバタと出かけていく柊

六月  
「時野さん!?」

柊   
「すぐ戻る!」