3章2話

○ セーフハウス・脱衣所~台所

浴室で柊がシャワーを浴びている
脱衣所に六月が入ってくる。ドア越しに会話

六月(OFF)
「時野さん、着替え、置いときますね。
サイズは大丈夫だと思うんですけど」

柊   
「あ、ありがとう」

六月(OFF)
「朝食作ってるので、着替えたらダイニングにお願いします」

柊   
「はーい」

六月が着替えを置いて台所へ移動
冷蔵庫を開けながら

六月  
「卵、ベーコン……野菜はあるし……パンでいいか」

調理し始める六月
パンをトースターにいれ、フライパンでオムレツを焼く
シャワーを浴びてきた柊が入ってくる

柊   
「服、ありがとう。シャワー浴びてさっぱりした」

六月  
「サイズ、大丈夫そうですね」

柊   
「うん、ぴったり。これ、君の服じゃないよね? 魔法で出したの?」

六月  
「いえ、知人におおむねのサイズ感伝えて、用意してもらいました。
魔法で服を作るのは効率悪いんですよ」

柊   
「万能ってわけじゃないのかぁ。なるほどね」

六月  
「持ってきてくれたのは、使い魔ですけどね。
さっきのカラスです。ファミリア便っていうんですよ」

柊   
「そこは魔法なのか!」

六月  
「普通の宅配は深夜に頼めませんし、急ぐと割高ですからね」

柊   
「現実的な理由だった。魔法でぱっと転送できるかと思ってた」

六月  
「転移魔法は、難しい魔法のひとつなんです」

オムレツを皿にのせている間に、トースターからパンが出てくる

六月  
「できました、簡単なものですけど」

柊   
「おお~、オムレツ! ありがとう、いただきます!」

テーブルについて食事をし始める2人

柊   
「すっかりお世話になっちゃってるなぁ」

六月  
「気にしないでください。部屋数はありますし。
あ、そういえばスマホとかは持ってないんですか?」

柊   
「なかった。ケータイも財布も手帳とか、身元がわかるものなし。あ、でも、これは持ってた」

ジーンズのポケットから懐中時計を出す柊

六月  
「懐中時計ですね」

柊   
「なんか、俺が持ってるの変な感じしない? 似合わないっていうかさ」

六月  
「え、あ、その……どうでしょう。
素敵な時計だと思いますよ。アンティークっぽくて……見せてもらっていいですか?」

柊   
「いいよ」

柊、ジーンズからチェーンを外して懐中時計を渡す
六月、竜頭を押して開けようとするが開かない

六月  
「ん、開かない」

柊   
「あ、コツがあるみたい。龍頭を押す時、ちょっと内側に倒し気味にすると開くよ」

六月が言われたようにやってみるとぱかっと開く

六月  
「ほんとだ。
開けるコツを知ってるってことは、やっぱり時野さんの時計なんでしょうね」

柊   
「何か書いてないかなーと思ったけど、特に何もないんだよね」

六月  
「……これ、魔法道具ですよ、たぶん」

柊   
「えっ、魔法道具?」

六月  
「ええ。この家の倉庫にあるアンティークと似た感じがあります」

柊   
「倉庫があるんだ」

六月  
「倉庫っていうか、蔵っていうか。お清め済んでないものをいれてあるんです。
これは――処置されていますね。簡単に発動しないよう、巧妙に隠されてるみたいだ。
キーワードか、時間なのか……わかりませんけど。
……お返しします」

六月が柊に懐中時計を返す
柊、受け取ってジーンズにチェーンをかける

柊   
「そんなのを持ってるなんて、俺、やっぱり本当に魔法使いなのかな」

六月  
「ただし、ウィザードではない可能性が高いですね。
ウィザードになる魔法使いは登録する必要があるんですけど、時野さんの登録は、ありませんでした。
ウィザードではない魔法使いだと、調査に時間がかかりそうですけど、転移魔法が使えるなら、だいぶしぼれる」

柊   
「そうなんだ……。わざわざ、ありがとう」

六月  
「服を取り寄せるついでがありましたから。俺の服じゃ、サイズ合わないでしょう」

柊   
「……佐奈崎くんさあ、きみ、本当に高校生? 有能過ぎない?」

六月  
「そんなことありませんよ。ただの高校生です」

鋭いアラート音が鳴り響く。

六月  
「……!」

柊   
「なに、この音……六月くんのスマホ!?」

六月がスマホ(デバイス)を出すと、画面にWARNINGが表示されている

六月  
「(息を呑む)ワーニング!? まさか……こんなに早く」

柊   
「それ、ラビちゃんのアラート!?」

六月、立ち上がる

六月  
「行きます!」

六月、部屋を飛び出す

柊   
「俺も行く!」

柊も部屋を飛び出していく