2章2話

○ セーフハウス・リビング

紅茶のポットとカップを六月がテーブルに置く

六月  
「紅茶を準備しちゃいましたけど、いいですか?」

柊   
「ありがとう。こんなカップで出されると、なんだかそわそわするな」

六月  
「あ、もうお清め済んでいるので、安心してください」

柊   
「お清めってどういうこと!?」

六月  
「えっ、そわそわするっておっしゃったから」

柊   
「そりゃそうでしょ、こんな高そうなカップ」

六月  
「ああ、そういうことでしたか。魔法の骨とう品だって言ったのが気になったかなと思って」

柊   
「魔法か……本当に佐奈崎くん、そういう世界の人なんだね。魔法使いっていうの?」

六月  
「そうですね。ああ、もちろん、普段は隠していますよ。普通に高校に通っています」

六月、紅茶をついで、カップを二人に配る

六月  
「どうぞ」

柊   
「ありがとう。あ、砂糖あったらもらえる?」

六月  
「ええ、もちろんです。シュガーポット、用意しますね」

六月がぱちんと指を鳴らすと、台所からシュガーポットが飛んでくる

柊   
「うわっ! 食器が飛んできた!?」

六月  
「(受け止めて)こういうのも、魔法ですね。俺の場合は、光に魔法を作用させるっていう使い方が多いです」

柊   
「ちょっと何言ってんのかわかんない」

六月  
「あははは。はい、どうぞ(シュガーポットを渡す)」

六月  
「魔法も、使い方ひとつなんです。たぶん時野さんもできたと思いますよ」

柊   
「記憶がないからできないだけ……ってこと?」

六月  
「その可能性は高いです。
魔法使いは、ナイトメア――あのバケモノの近くにいても意識を保っていられるものですから」

柊   
「魔法使いじゃないと、気絶しちゃうってこと? ……ん?」

六月  
「そうです。つまり、お二人とも、『魔法使いの資質があるかもしれない』んです。
それで提案なんですけど――ラビさん、あなたに魔法をかけていいですか?」

六月  
「おそらく、また襲われると思うから」

柊   
「ちょっと佐奈崎くん、むやみに怖いこと言わないでよ!」

六月  
「すみません。でも、言わないわけにはいけないんです。
『ラビット』は特殊な力を持つ魔法使いである可能性がある人で、その力を持つ魔法使いは、ナイトメアに狙われやすい」

六月  
「だから、あなたを守る魔法をかけさせてほしいんです。何もなければ魔法は発動しません。
万が一何かに襲われたら発動し、すぐに俺へアラートが届きます」

柊   
「……そうか。あの黒いヤバイ男も、襲ってくるかもしれないし」

六月  
「そうです。あらゆる脅威に対して、発動します。そしてもしアラートが鳴ったら、いつでも必ず駆けつけます。
──大丈夫。俺を信じて。何があっても、あなたを守ると誓います」

柊   
「(あっけにとられつつ)誓っちゃうの。重すぎない?
いや、俺だってそう思ってるけど、佐奈崎くんの言葉っていちいち重いっていうか堅苦しいっていうか……本当に高校生?」

六月  
「えっ、そうですか。周りにも時々言われるんですよ。俺は普通にしてるつもりなんですけど」

柊   
「ほら、ラビちゃんだってびっくりしてる。今日一番のびっくりだよ」

六月  
「えーと、じゃあ、魔法をかけようかな」

魔法発動音、その中にノイズ

六月  
「(咲良がかけた追跡魔法の違和感に気づき)ん……(独り言)さすが、マッドドッグ。ビーコンとは」

咲良の追跡魔法を打ち消す

柊   
「どうかした?」

六月  
「(にっこり)いえ、なんでもありません。では、魔法をかけますね」

魔法発動音